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THE NIGHT

ガッシュ 抽象画 サイズ : 250×300×30

THE NIGHT  腕に巻いた時計は今日も22時…残業を終え満身創痍でオフィスビルの外に出ると雨が降っていた。「傘持ってないの?一緒に帰ろうか」同じく残業してた先輩の男性が声を掛けてくれた。私は好意に甘え先輩の傘の中に入り込む。  しばらく並んで歩くと雨が上がった。先輩が傘を閉じて雨水をパッパッと払えばその度に水玉がキラキラとに飛び散った。「ありがとうございます」私はお礼を言った。傘を絞る手元を見たまま先輩は微笑んで頷く。  私たちはまた歩き始める。雨上がりの濡れた街は鏡のように光を反射して輝いている。「晴れてたら今日は満月」私は独り言のように呟いた。「え?そうなんだ」曇った夜空を二人で見上げた…が月は見えない。「残業忙しいですね…こんな生活いつまで続けるんですか?」私は何を言ってるのだろう…⁈焦ったが続けて話す「時々自分を見失う時があるんです…私は誰なんだろう?…って」しばらく二人の間に沈黙が続いた…。  やがて駅に到着し私たちは改札口で立ち止まった。「俺が思うには…」先輩が口をひらいた「…満月が本当の君の姿だとして風が出て雲が動けばもうすぐそれを見れるかもしれない…でもそれを待ってると最終電車に乗り遅れてしまうから仕方なく最終電車に乗る…」私は先輩が一生懸命考えて伝えてくれた事がよく理解できた。「私たちはそうやって幾日もの夜を月を見ずに…」私はまた独り言のように呟いて「電車に乗る!」二人の言葉がそこだけ重なった。それが面白くて二人で見つめあって笑った。そしてそれぞれの電車がくるホームに向かって別れた。  私は去年の春、大学を卒業して県外の不動産会社に勤めた。転勤や卒入学が重なるこの時期、毎日が目まぐるしく忙しい。でもこの夜は少しだけ、私は私と出会えた気がした。

作者:小山ドン足

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